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2016/03/06

HP100LX/HP200LXの簡単な偏光板交換作業手順

押入れのLX箱の中を確認すると、HP100LXのほとんどとHP200LXの一部の液晶画面が黒く変色していました。
いわゆる「ビネガーシンドローム」です。偏光フィルムと接着剤が黒く変色して、酢酸臭がしています。

何台か作業して、割と楽に手短に作業するようになりました。

液晶の分解、いりません。トルクスドライバーすら不要です。
絶対に必要なのは、プラスチック製へら、新しい偏光板、新しい偏光板を切るはさみかカッター。
必要だと思うのは、マスキングテープ(なんでもいいです)と無水エタノール。キムワイプかティッシュペーパー。
あるといいのは、両面テープとエコリムーバー(絵具剥がし剤)、へらの予備。カッターマット。無水エタノール容器。

Dsc_0629

あ、LXと単3電池はもちろん必要になります。

所要時間の9割は固着した接着剤はがし作業になります。
これが短時間で済めば助かりますが、小一時間は用意しておいたほうが落ち着いて作業ができます。

なにしろ分解しない作業なので、壊す危険性といえば、固着した接着剤をはがすときに使用する溶剤類を余計なところに浸潤させたりたらしたりしてLXの部品に悪影響を与えることが一番になります。それ以外は不器用でもできる簡単な作業になります。

まず、画面中央部から楕円形に黒く変色した、もう使えないとあきらめたLXを用意します。
次に偏光板を用意します。偏光板は15cm以上の大きさのシートです。糊付きと糊なしがあります。
どちでも作業は可能ですが、糊なしの方がはるかに楽です。ケータイ画面保護シートを貼るのが苦手なら、
糊なし(接着材なし)の偏光板がおすすめです。

糊付きの偏光板で、貼り付けるときにホコリが入ってしまった例をお見せします。

Dsc_0621

画面右端下辺りにホコリが入ってしまい、その周辺は丸く浮いています。こんな感じになってしまわないように、貼り付けるのに繊細さが必要となるので、不器用な自分は糊なしがいいと思いました。

1.偏光板 東急ハンズで売っていました。
ミッドタウン 偏光シート250角 粘着あり BS250

次にプラスチック製へらです。ホームセンターで売っています。
2.ヘラ
イノウエ プラスチックマルチヘラ 30 12701
これで主に作業しました。これくらいの大きさがよかったです。お尻が丸くて掌が痛くならないものがおすすめです。

SK11 カーボンスクレーパー 20mm
画面周辺に残った接着剤をゴリゴリ削るのに、先ほどのへらが丸く削れてしまったので、こちらも調達しました。


3.マスキングテープ
なんでもいいです。定番の、
3M スコッチ 塗装用マスキングテープ 18mm×18m M40J-18

を用意しました。

4.無水エタノール
無水エタノールP 500ml


ティッシュペーパーかキムワイプに取って使うので、このままでも問題はありません。ただ、お掃除とかにも使えるので、スプレーボトルに小分けして使っています。
AZ(エーゼット) PETボトルスプレー100mlPS100 B245

5.キムワイプかティッシュペーパー
キムワイプ 12×21.5cm /1箱(200枚入) S-200

もちろん、ティッシュペーパーでもできます。ティッシュペーパーだとほこりが出てしまうので、
いちいち拭き取ったり、マスキングテープでペタペタ掃除する必要が出て面倒なので、
キムワイプがご家庭にも一箱あると楽で便利だとは思います。

6.絵具剥がし剤
ターナー アクリルガッシュメディウム エコリムーバー40ml

定番の固着接着剤溶かし溶剤「ネオ ホルベックス」について、主溶剤のジクロロメタンが胆管癌を発症させる疑いが持たれ、入手できなくなりました。
代替品エコリムーバーでは、固着した接着剤に塗って30分置いても、ほとんど接着剤が溶けてくれません。
ただ、扱いやすさという意味では、作業していてあまり悪影響がなさそうなので、子供のいる家庭でも気軽に使えてありがたいと思っています。結局ヘラでゴリゴリ剥がすことになっても、はがした接着剤が丸まってたまってくれるので掃除が楽です。周囲にマスキングテープを貼っておけばガシガシ作業しても気楽でした。

たとえば自転車チェーン用のディグリーザーを使うのは、たれたり浸潤したりする危険性にかなり注意が必要だと思います。エコリムーバーは不器用でも、粘度が高くて扱いやすかったです。

7.両面テープ

3M スコッチ はがせる両面テープ 超透明 薄手 15mm×1.5m KRS-15
なくても全く問題ありませんが、液晶周りのカバーシールを何度も剥がして粘着が足りなくなったり、
糊なし偏光板をカバーシールで貼って固定してしまうのが今回の簡易的な作業なのですが、
偏光板を小さく切りすぎて固定が不十分になったときも、薄めの両面テープがあれば安心です。


8.こじあけ(不要)
腕時計用のこじあけ工具です。ハンスで売っています。
明工舎製作所 MKS コジアケ 18800 9mm 時計工具
今回は、これを使いました。液晶周囲のカバーシールをはがし始めるときと、古い偏光板を右上からはがし始めるときに使うと、数秒ではがし始められます。ヘラの先端や、爪でもできますから、必須ではありません。
なお、ぼくがLXを分解するときに使っているのは、もう少し幅の広い、
MKS[明工舎] 18810 こじあけ  19ミリ
こちらのこじあけ工具です。こちらでも同様に作業可能です。

コジアケの代わりに、爪でも、ヘラの先端でも、カッターでも、ピンセットの先でも、ブレードの先でも、
それこそフォークの先でもできなくはないです。角を起こせばあとは指でできる作業になります。


さて、用意ができたら作業します。

I.液晶周りのカバーシールをはがします。
右端あたりをヘラやコジアケや爪で持ち上げてはがします。
右端の内側から爪ではがせば大体はがれると思います。

Dsc_0623

II.古い偏光板をはがします。
右上か右下の角から、コジアケやヘラの先端や、カッターやハサミやピンセットなどでシート角を起こして、
1-2mm角が持ち上がったら後は指でつまんではがします。途中で割れたら爪で続きを起こしてはがします。
酢酸臭が一気にひろがります。はがした中心部の黒くなった古い偏光板は臭いです。
ビニール袋に入れて口を閉じるか、無水エタノールで洗えば臭いはだいぶ弱まります。
どうせ使わないので、すぐに捨ててしまいましょう。取っておくことなど最初から考えないのがいいです。

液晶ユニットは一切分解せず、LXから取り外しもせずに作業を行います。
金枠の内側に偏光板はおさまっているので、なんとか右角を起こせばはがすことができます。
右側から作業するのは、ガラス面を誤って傷つけてもさほど気にならない場所だからです。

III.マスキングテープを液晶ガラス面の周囲をぐるり貼ります。

IV.固着した接着剤(糊)をはがします。

Dsc_0552

このとき、エコリムーバーをたっぷり塗って2-30分放置すれば、ほんの少し作業が楽になります。
放置しないとガリガリ硬いままですけれど、塗っていれば力づくてはがした糊が丸く集まるので楽です。
中心部はヘラで力を入れれば削れていってなんとかはがれるはずです。プラ製ヘラなので、容赦なくこすります。
掌が赤く痛くなるくらいこすります。

液晶周囲は、なかなか取れずに残ります。
削れた糊は、ティッシュなどてつまんで捨てます。

V.無水エタノールをキムワイプに軽くしみこませ、ガラス面を掃除します。
爪かヘラの角でで周囲に付着した接着剤を丹念にこすり取ります。


VI.偏光板をかざして、一番コントラストの良さそうな角度を見つけて切り抜きます。
Dsc_0625

100LXと200LXでは、たいてい90度は違っています。
市販の偏光板では、少し傾けないと暗い画面になってしまいます。
現物合わせが一番です。
大きさは、液晶金枠の内側に収まる大きさにします。

VII.新しい偏光板を置き、液晶画面外枠のカバーシールを貼って固定します。

切り抜いた偏光板を金枠の内側に入るか置いてみます。はみだした部分をさらに切ります。
大きさがよくなったら、LXの画面のホコリをよくとります。ふいたり、マスキングテープで取ったり。
綺麗になったら、偏光板の両面に貼ってある保護シートをはがして、画面の上に置きます。

Dsc_0627

偏光板が金枠の内側に収まったら、カバーシールを貼ります。
粘着が弱いときは、薄い両面テープを貼って固定します。

Dsc_0633

VIII>完成

Dsc_0640

出来栄えが悪くても、偏光板の切り出しが歪んでいても、自分で使う分には、
実用上はほtんど問題にはなりません。

注意するのは、無水エタノールを多くしすぎないことでしょうか。多すぎてはみ出たりしみたりしたら、
電池を抜いておき、しばらくすれば揮発するかと思います。
ヘラで力を入れる分には、あまり問題は出ていません。

画面が中央から黒ずんで使えなくなったLXも、自分で使う分には、不器用でも簡単に
修理できることが分かりました。


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コメント

偏光板交換作業手順を掲載してくださってありがとうございました。

材料を買い揃えておいて、時間のあるときにでもやってみようと思います。

BlueSky

投稿: BlueSky | 2016/03/08 12:23

液晶を取りはずして偏光板を張り替える自信がなくてあきらめていたのですが、ご紹介いただいた方法で簡単に修復できました。
有り難うございました。

投稿: 酒呑老人 | 2016/06/13 15:08

いつか治療法が発見される(自分で補修できる日が来る)と信じて待つこと数年。それまで保管してこう……。

このたび、分解せずに偏光板の交換が簡単にできる方法を教えていただき、ありがとうございました。

画面が黒くなってしまった4台を、記事の通りに作業して、すべて無事に再生することができました。

1枚は力加減を誤って液晶ガラスを割りました(泣)が、予備の液晶基板と交換が成功してセーフ。こんなに簡単に直るとは思いませんでした。

徹夜で計5枚ガリガリして、自信が付きました(笑)。もう、ビネガーシンドロームは怖くありませんね。

●これからトライする人への伝言
・記事本文に書かれている通り、偏光版は糊なしがいい。
・250x250mmの偏光板から4画面分とれたが、余分に調達しておいたほうが安心。
・はがしは、幅の広い白いヘラがいい。幅が狭い黒いヘラは力が一点にかかりガラスを割りやすい。
・固着した接着剤が完全にふやけてなかったら、再度エコリムーバーでふやかす。(その間に風呂にでも入る)
・エコリムーバーをケチると接着剤がフヤケない。塗り過ぎると画面周囲から内部に入る。
・画面周囲のエコリムーバーのふき取りが不完全だと、完成後に浸潤してくる。
・偏光板の角度を調整して、あえてネガ画面バージョンのLXを作るのもクール。
・作業は電池を抜かなくてもできる。つか、電池を抜いたら、偏光板の角度が決められない。

投稿: 『ギャル文字一括変換装置』 | 2016/10/13 11:48

2017 年明けに200LX が目に入り、電池をセットしてみてビックリ。画面中央が黒い・・・

ググってビネガーシンドロームと、このHPに辿り着き、1/2 ハンズでBSP-250(糊なし)を¥940(Without Tax)を購入。
LCDガラス上に残った接着剤をちまちま削り取り・・・偏光角度を調整してカッティング。(約45°でした)

ついでに本体分解でLCD接点もアルコールクリーニング(カーボンの粉少々)と接点復活剤でクリーニング。

組み立て後の初期設定の日付入力で / が
入らない事が発覚してガックリ。LCD接点をクリーニングして一晩放置。。。

翌朝確認したところ、全てが正常動作!
数時間掛けてLCD接点が密着。
熟成期間・・・必要ですね。

200LXはある意味ネットへの情報漏洩が無い分、パスワード管理に安心機器かも。
もう暫く付き合えそうです。

LCD偏光板交換情報、ありがとうございました。

投稿: curium | 2017/01/04 19:36

あやち様
液晶が黒くなって2年ぐらい置いていた200LX。捨てるにも捨てられず、AndroidのTabletのDOSBoxとBluetoothキーボードで、DOSのソフトを動かし始めたのが年末でした。たまたま、年明けにあやち様のサイトにめぐり会い、今日、200LXの液晶が復活しました! 本当にありがとうございます。バックの色が、鮮やかな(光をよく反射する)緑色になり、元の液晶よりも視認性・コントラストとも、1段上昇したと感じます。困りました。また、200LXに「惚れなおして」しまいました!

投稿: Basic Lover | 2017/01/04 21:50

Of late, I have come to discover the forums which have information which is professional and reliable. Every time I come across published content, I am able to know that it is content which is worthy to read and important. In addition to that, I also utilize some time and read the details in it. I have found this post to be very useful.

投稿: Review My Wrongly Written Coursework | 2017/03/15 23:01

こんにちは。

交換作業手順のところに書かせて頂きました。
自身のHP-95LXは、基板側の偏光板に貼ってあるアルミ蒸着テープの金属部分抜けが原因でした。

液晶をばらしてみて、偏光板、書かれているような問題はないんだがと進んでいった結果、行きつきました。

ばらした部材は一応取ってあります。
自身の本体は、画面が正常なジャンク品をとってきて取り付けようかと思います。

投稿: 珈琲あざらし | 2017/05/05 08:13

先週末に、3台の液晶を直しました。
製造ロットによって、偏光板の切り出し角度が微妙に違うようですね。

液晶に残った接着剤は、カッターナイフのケーシングの先でごしごし削りました。200LXの液晶は、多少力入れても大丈夫のようです。

修理のついでに、画面の縦筋抜けや表示の乱れを、液晶を止めているトルクスねじの左側を締めなおして直しておきました。

ちなみに、最終ロットに近い1999年製の液晶は黒変被害から逃れています。

折れた右首の修理方法は、また別の機会にでも。

投稿: 佐藤 康 | 2017/06/30 11:36

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